映画『七つの会議』の感想!ねじ六から見る製造業の未来とは?

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2月1日(金)に公開された映画「七つの会議」を観てきました。

製造業に携わる者としては色々想うところがあり、観ていて熱くなってしまった映画でした。笑

「半沢直樹」を代表とした池井戸チームの常連役者さんたちの演技は安定感があって、先日観たマスカレードホテルに引き続き、とても楽しむことが出来ました。

 

今回は、そんな「七つの会議」の感想をつらつらと書いていこうと思います。

また、劇中に出てきた老舗のねじ加工会社の「ねじ六」から見える製造業の未来についても書いていこうと思います。

ネタバレ万歳なので、観る気がない人や、すでに観た方以外はこれより先は読まないことをおすすめします。

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こんな会社ある?…んだよなきっと

劇中の舞台は、大手メーカーのゼノックスの子会社である日本建電という会社です。

この会社は、航空機や電車からホームセンターや会議室まで、あらゆる”座席”を販売する営業一課が花形部署で、もう一つの営業二課は中堅電機メーカーとして開発した電化製品を細々と販売している”肥溜め部署”があるようです。

 

ちなみに、航空機の内装で、世界的に強い会社が日本にあるのをご存知でしょうか?

それは、「ジャムコ」という会社です。西東京エリアにあります。売上高こそ800億円以下ですが、航空機のトイレを作るメーカーとしては圧倒的なワールドクラスの会社なんですよ。

 

 

さて、話は戻りまして、劇中の舞台である日本建電は、親会社のゼノックス製品を販売する代理店機能も持っているようです。

キヤノン⇒キヤノンマーケティングや、花王⇒花王カスタマーマーケティングなど、グループ内に営業会社を持っているメーカーは競合よりも営業力があり、業界での確固たる地位を確立していることが多いですよね。

グループ会社でも何でもない専門商社を代理店に使うメーカーは、販売戦略の統率が取れず、しかも専門商社の営業力も大したことがないため、花王のような大手には中々勝てないんですよね。

トイレタリー業界で、花王とライオンの違いはそこにあるように思います。メーカーとは、「営業」×「技術」の両方を追求しなければならないのに、どちらかに偏ってしまうメーカーが多過ぎると思います。

 

日本建電では、「営業」に重きが置かれているようで、営業会社特有の数字絶対主義の厳しい月次会議が行われています。

今どきこんな軍隊みたいな会社があるのか、私には分かりませんが、パワハラが社会問題になっているこのご時世ですから、きっと似たような会議をしている会社は沢山あるのでしょう。

競合とのコンペに負けた理由を及川さん演じる原島課長が「スペック面で負けていた」と分析しても、香川照之演じる北川部長は、「それでも買ってもらうのが営業。商品を言い訳にするような奴はくそだ!!!」と一蹴します。

引用:「七つの会議」製作委員会公式画像

 

これ、営業あるあるですね。営業担当としては、勝ってもらえない理由を明らかにしているのに、「そんなの言い訳だ!!」と上に一蹴されてしまう・・・。

特に金融や人材派遣、複合機などの体育会系でゴリゴリ営業をする会社なんかでは蔓延っているのではないでしょうか?笑

 

そして、この会社は経理部と営業部とで、異常に仲が悪いのも気になります。

「出世争い」が激しいのが特徴的で、完全実力主義なんでしょう。さすがにここまでギスギスした会社は無いと思うんですが・・・。

 

何故安いのか?は常に考えるべき

劇中では、日本建電が座席に使用する「ねじ」を、「ねじ六」という老舗の町工場から、綺麗な工場を持っているベンチャー企業「トーメイテック」という会社に変更したことがポイントとなっています。トーメイテックの方が月90万円ほど安くねじを供給してくれるからとのことでした。

 

左遷された営業一課の坂戸課長がこれを実行したようですが、実はこれは強度偽装によるコストダウンの実現だったことがのちに発覚します。

野村萬斎さん演じるサボリーマンの八角係長が、坂戸課長の不自然な左遷後、すぐにねじ六に転注したことで経理部が不審に思い、そこから段々と強度偽装が明るみになっていったのです。(結果的には、八角さんは正義を貫いていただけ)

 

一般的には、部品の価格というのは「材料費」+「加工費」で出来ています。同じ材質であれば、値差が付いてくるのは「加工費」です。これは技術力や使用している装置のスペックで変わってきます。(作るのに掛かった時間が短い方が加工費は安く済むからです)

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「ねじ六」は100年続く老舗企業。そんな老舗の職人が作っているネジの製作時間を、ベンチャー企業のトーメイテックが、最新の加工機械を駆使したとしても、そう簡単に上回ることは出来ません。私が知っている加工会社を考えても、老舗の職人が作る部品は安いです。懸念点があるとすれば、加工機械が古いので、最新機械による超精密加工は出来ない点です。

もちろん、そこまでの精密部品でなければ決められた公差(※図面には10㎝と記載されているが、実際には9.99㎝~10.01㎝以内に仕上げなくてはならない、などといった指示寸法)を満たすのはアナログな機械を使用していても全く問題ありません。職人は伊達に職人やっていません!!

 

劇中では、「精度や品質保証面で勝るから」ではなく、「価格で勝るから」という理由でトーメイテック製のねじが使用されていました。

ここに、私は観ていて違和感を感じたのですが、案の定、トーメイテック製は強度不足による偽装ねじでしたね。

 

安いもの、高いものにはそれぞれ理由があります。

「中間業者がマージンを取っているから高いのか」、それとも「材質や、加工が難しいから高いのか」など、その理由を考える癖をあなたも付けておいた方が良いですよ。

メーカーの購買は最近だと「安ければ何でもOK」という姿勢をよく見かけるのですが、何で安いのか、と言ったところまで分かるようにしておかないと、いつか痛い目に遭うと思います。

 

ねじ六から見る製造業の未来

100年続く老舗企業のねじ六ですが、ああいう経営難の老舗企業は今後どんどん増えていくと思います。

資金力のある会社はどんどんと設備投資をして最新工場になっていき、品質保証体制も整ってきて、どんどん仕事が集まっていきます。

やっぱり人間、汚い工場よりも綺麗な工場に部品の発注をしたいものです。汚いお店よりも綺麗なお店の方に食事しに行きたいの同じです。

また、仕事が大量に集まる会社は、今度は「材料費」も安く仕入れることが出来るので、格差はどんどん広がっていきます。

 

そもそも、日本の製造業界ですが、人口減少による内需が縮小していること、法人税や人権費が高いこともあって、メーカーの工場は国内からどんどんなくなりつつあります。

そのため、作らなければならない部品の全体量も減っており、今までのように仕事が豊富にあるわけではなくなってきています。

 

そんな中、日本の製造業では偽装やデータ改ざん問題が多発しており、品質保証体制がますます厳しく要求されていきます。

そうなると、やはりアナログな検査しか出来ない老舗の町工場は不利で、メーカーの購買担当者からは敬遠されるようになっていくでしょう。

 

但し、その弊害はもちろん出てきます。

職人はモノづくりを極めようとしているので、ああした方がいい、こうした方がいいと発注者側に意見をしてくれますが、トーメイテックのようなただの部品加工の受託工場ですと、単なる言いなりでしかモノづくりをしません。

「どういうデザインをしたら加工時間が短く済み、加工賃を安く抑えられるか」なとと言ったモノづくりの思考を、メーカーの設計者だけではなかなか出来ないのが現実です。

メーカー側の無茶な設計も、職人さんであればあれこれ頭を悩ませて最適な加工方法を導きだしますが、受託工場の加工作業者だと、そこまでの試行錯誤が出来ずに「製作不可」と回答をするだけになります。

そうなると、無駄に見積もりのやり取りが長くなり、設計から開発、試作までの時間も長くなってしまいます。

 

このような弊害もあるので、古い町工場を安易に切るのはオススメしません。

適材適所があるので、設計や購買の方は、町工場の職人さんとも仲良くしておくべきなんです。(気難しかったりしますが。笑)

 

 

野村萬斎と香川照之の演技力

話は映画の感想に戻りますが、結論から言うと「面白かったです!!」

野村萬斎さんと香川照之さんをはじめとした役者さんたちの演技はメリハリがあって、とても観やすかったです。

及川博光さんの小心者の演技も笑えましたし、萬斎さんと香川さんの怒鳴り声は迫真の演技でした。

震えながら怒っているシーンなどは、この人たちにしか出来ないと思います。怒鳴って声を張り上げる迫力も、この人たちだからこそ。

 

あ、会議中に詰められて、原島課長がゴミ箱に吐いてしまったときに、女性社員から借りたハンカチをそのまま返そうとしたのは普通に爆笑でした。

詰めている途中に、「そのまま返すな!!!!」と怒鳴り始めた北川部長のお説教にも笑ってしまいました。笑

 

ストーリーも壮大で、たかがねじですが、されどねじ。

使用されているすべての航空機が運航停止になったり、たかがねじでも人の命が掛かっていたりと壮大な話でした。

 

この壮大さは、フリーランスには絶対に有り得ない世界で、こういう仕事が出来るのは会社員の数少ないメリットなのかなと思います。

 

おわりに

映画「七つの映画」ですが、観ていない人は絶対に観た方が良いと思います。

特にサラリーマンの方は、ところどころ見られるあるあるネタには共感してしまうでしょうし、業界的に関係ない方でも、仕事をしている方であれば絶対に楽しめる作品だと思います。

私個人的にも製造業界を追いかけている身としては、あらためて品質保証の部分で身が引き締まる想いでしたし、どんなことがあっても不正は絶対に駄目だと再確認できました。

「ねじ六」のような会社は今後も向かい風が続きそうです。個人的にはなんとか存続して欲しいという気持ちが強いですが、人口減少+内需が縮小しているとなると、やはりますます厳しくなりそうです。

もっと国内に工場を呼び込まないと、どんどん日本のメーカーの実力は落ちていくと思います…。

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この記事の著者

Rid

とある化学メーカー勤務のサラリーマン。部署内、歴代最速で昇級。歴代最速で新卒の指導員。製造業の現場から、経済を俯瞰している現場の沸騰経済学者。好きなテレビ番組は「未来世紀ジパング」。暇さえあればスマホで当番組を視聴している。科学の発展と経済の未来を考えるのが好き。
一方では、会社員での給料を元手に投資の世界へ。為替を主戦場として、金融の世界からも世界経済を観察している。

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