
GWの終わりに、米中貿易戦争が激化するファンダが発生しました。
トランプ大統領が、対中貿易に関する関税を25%に引き上げるというTweetをしました。
For 10 months, China has been paying Tariffs to the USA of 25% on 50 Billion Dollars of High Tech, and 10% on 200 Billion Dollars of other goods. These payments are partially responsible for our great economic results. The 10% will go up to 25% on Friday. 325 Billions Dollars….
— Donald J. Trump (@realDonaldTrump) 2019年5月5日
今までは500億ドルのハイテク製品に25%、それ以外の2000億ドルの製品に10%の関税を掛けてきました。また、325億ドル相当の製品は非課税でした。これが、金曜日から25%になるとのことです。
これを受けてクロス円は窓開けして下落、ドル円はついこの間まで111円台をキープしていたのが110円台後半にまで下落。
今まで交渉は順調なのか、GW前には特段目立ったニュースも無かったのですが、ここにきてトランプ砲が発射されることとなりました。
さて、この米中貿易戦争ですが、今後はどうなることでしょう。1番気になるのが日本への影響ですよね。
トランプ大統領の、二転三転する対外交渉のやり方を予想するのはなかなかに難しいのですが、製造業的観点から私は中国が勝つことを予想します。
為替市場では円買いや豪ドル売りが初動で見られましたが、果たして本当にそれで良いのか、正直私には分かりません。
習近平が屈しない限りは終わらない
まず、この米中の貿易戦争ですが、中国の習近平主席が敗北宣言をしなければ終わりません。
敗北宣言とは書きましたが、なるべく自尊心が傷つかないようなオブラートに包んだ結果になることを指します。
「あれ、これよく考えたらアメリカ大勝利じゃん」
という交渉結果ですね。
トランプ大統領は「アメリカファースト」な姿勢を当選後から一貫していますから、ここで出る杭を打つことを止めることは絶対に有り得ません。
今では中国は、Huaweiを筆頭に、ハイテク分野での成長が著しいです。
AppleやMicrosoft、IntelやMicronなどのハイテク巨大企業が乱立するアメリカにとって、これは脅威としか言いようがありません。
微妙に分野が違って協業出来れば良いのですが、そこはマネが得意な中国。
コンセプトは、「安く、大量に、世界にバラまく」であり、真っ向から競合関係になるハイテク企業が多いです。トランプ大統領は絶対に潰しに掛かります。
トランプ大統領はビジネスマンなので、自国が優位になるような交渉をいくらでも仕掛けます。
恐らくは、ハイテク分野は下げないけど、他分野の”好きに成長すれば?”なところの関税は引き下げてあげるという着地点で交渉をしたいのでしょう。
習近平は屈しない
一方、習近平国家主席もまた、屈しないと思います。
中国には、まだまだ余裕があると思います。自国のバブルを弾けさせるようなミスをしなければ大丈夫でしょう。
その根拠は2つ。
- 川下に強いから。
- 川上に強いから。
もう少し詳しく分解すると、
- 結局は人口の多い大国で、外貨も獲得出来ていて購買力もあるのが今の中国。商流の最終エンドは中華圏だから(川下)。
- 中国はオセアニアなどの資源国家との関係が強固になっている。つまり、川上を抑えているのは中国であり、安く調達できれば安い製品が作れるから。(川上)
スミマセン、書いてて分かりにくかったので、もう少し分解して見ていきます。
①川下を抑えている
①のエンドの話ですが、結局は「消費者が多い」国は勝ちます。高度経済成長期の日本も、人口ボーナス(人口増加)があったからこそ、日本の企業は急速に成長しました。
自国民に大量に販売して利益を稼ぎ、その豊富な資金で海外に展開するという王道パターンです。
引っ越しをしたことのある方なら分かると思いますが、引っ越しをすると、家電を買いますよね?しかも、それぞれがそれぞれ高い。
今では、一人暮らしを始める初期投資に平均70~80万円は使うというデータもあります。
こんな人が増加傾向にあったら、製品を販売している企業は儲かるに決まっています。
この人口ボーナスが中国にはあります。一人っ子政策の結果、少子高齢化が進んではいますが、まだまだ中国の人口は多い。
さらに中国は、一帯一路政策で海外の発展途上国に大量に資金を投下して、無理やり関係を構築しています。これによって、発展途上国の人口ボーナスの恩恵も得やすい環境になっているのです。
いくらアメリカ企業が製品を作っても、売り先が無ければあまり意味がありません。
Googleのように、必然的に使う技術や製品を開発し続けなければならないのです。これは非常に大変。
中国は、他国企業の真似をして大量生産・大量販売すれば良いだけなので、ある程度の水準まではどんどん成長していきます。
②川上を抑えている
それよりも強い根拠なのが、中国は資源国家との関係性を持っていることです。
アメリカは資源国家とはそんなに仲が良いとは言えません。
ロシアにしろアフリカにしろオセアニアにしろ、「アメリカファースト」を貫く限りは、そこまで深い関係性にはなれないのが実情です。
一方、中国はこれらの国とはあらゆる手段を講じて、一応の関係性は築けています。
オーストラリアなんかも、今や中国との貿易は欠かせないものになっていますから、川上を抑えているのは中国です。
製造業に携わっている人ならよく分かると思いますが、川上をきっちり抑えていると、安く仕入れが出来ますよね?
BtoBでは買い手が売り手に対して圧倒的有利なので、資源の買い手になる中国は交渉次第では強烈に安い資源の仕入れが出来るようになります。
これでモノを作れば、アメリカよりも安い製品が作れるのは当たり前です。
「でも中国には技術が無いでしょう?」
無くても良いんです。
技術者をヘッドハンティングしてきて、他国の高シェア企業の製品を真似するだけですから。
マネした結果、同じ品質でありながらも安い製品が作れるという構図です。
しかも、最近では中国は国家単位での製造業への投資があり、莫大な資金での研究開発が可能になっています。
すると、「単に真似するだけではないオンリーワン製品」の開発が出来るようになっているのです。
5GやAI競争なんかでは、中国企業も当然に名乗りを挙げてきています。
今や中国はハイテク国家。世界有数の製造国家になっています。
というワケで今後の流れの予想
上記2点を根拠に、私はこの貿易戦争は中国が優位で勝つと予想しています。
トランプ大統領も、焦りがあるからこそ、今回のような制裁を課したのだと思います。
今回のような25%関税を実施したところで、中国の勢いは止まらないでしょう。
今は、アメリカのお株である、半導体のチップメーカーを育てています。YTMCやJHICCなどのメーカーですね。受託製造メーカーではSMICも成長してきています。台湾のTSMCのお株を奪うつもりですね。
自国で半導体チップを生産できるようになると、いよいよアメリカ企業の優位性が失われていきます。
製造装置メーカーはアメリカと日本が強いですが、中国としては①国産の装置(現在育てている)②日本の装置の2つを両立すれば、アメリカ産の装置無しでも十分です。
実際、日本の装置メーカーは中国への販売が出来なくなったら痛いです(販売先=米国、韓国、中国がメイン)。売れるなら売りたいです。
従って、アメリカとの関係が悪くても、中国は日本から製造装置を買えるのです。
日本への影響
というワケで、米中貿易戦争は報道の通り、ハイテク分野がポイントです。
そんな中で、地味に影響が大きいのが日本。
半導体の製造装置やロボットなどの「メカ」に強い日本がどう立ち回るかが重要になってきます。
現在ではアメリカ側に立っていますが、経済的には中国との関係性も切れません。
トランプ大統領は、「半導体製造装置を中国企業に売るな」と言ってくる可能性が高く、そうなると日本としては非常にマズイ状況になります。
そうなったときは、どっちを選んでも一方から敵視されてしまいますから、そうなったときは日経は暴落ですかね。笑
いずれにせよ、今後どうなるのかは予想が難しいですから、この件については注視し続ける必要があると思います。
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