投資信託

【下落相場でも堅調】楽天米国高配当インデックス・ファンドの特徴と“強さの秘密”

出典=楽天投信投資顧問ホームページ
ゆう係長

当ブログにお越しいただき、ありがとうございます!

本稿では、インデックス・ファンドの一つ「楽天・米国高配当株式インデックス・ファンド」(楽天VYM)を深掘していきます。

2022年に入って株式相場は下落が続いていますが、楽天証券によると、楽天VYMは6カ月リターン(期間)は15.46、リターン(年率)は33.3と堅調です(5月6日時点)。

年初来の株価下落でグロース株から、バリュー株への注目がさらに高まっています。

このブログではそんな脇役にスポットライトを当てたいと思います。

超人気のeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)との違い――。特に組み入れ銘柄に着目し、なぜ楽天VYMが下落相場で堅調なパフォーマンスを維持しているのかわかりやすく紹介したいと思います。

楽天・米国高配当株式インデックス・ファンドの特徴

楽天VYMの基本情報

楽天・米国高配当株式インデックス・ファンド(楽天VYM)は、米国株の高配当銘柄に分散投資するインデックス・ファンドです。

基本情報を簡単な表にまとめてみました。

名称楽天・米国高配当株式インデックス・ファンド
設定日2018年1月10日
純資産額81億3700万円
ベンチマークFTSEハイディビデンド・ イールド・インデックス(円換算ベース)
実質投資先米国高配当ETF・VYM
ファンド騰落率1カ月9.7%、3カ月8.4%、6カ月19.9%、1年27%、3年59.3%、設定来58.7%
管理費用0.192%
分配金有無無し(再投資型)
楽天証券ホームページと月次レポートより作成(2022年5月13日時点)

VYM(米国高配当株ETF)に連動するインデックス・ファンド

世界最大級の運用会社・バンガード社の「バンガード・米国好配当株式ETF」(VYM)を実質的な投資対象にしています。

FTSEハイディビデンド・ イールド・インデックス(円換算ベース)というベンチマークに連動する投資成果を目標に運用されています。

出典=楽天VYMの投資信託説明書(交付目論見書)

純資産総額は81億円とかなり小規模

ファンドの規模を示す純資産総額は81億3800万円です。5月13日時点で、基準価格は1万5631円です。下図を見れば、順調に育ってきていることがわかります。

出典=楽天VYMの投資信託説明書(交付目論見書)
ゆう係長

2022年2月、人気の投資信託であるeMAXIS Slim米国株式(S&P500)の純資産総額はインデックスファンドとして初めて1兆円を突破しました。1兆1321億円だから、楽天VYMは弱小ファンドに見える…

同じ米国株のインデックス・ファンドの純資産総額をいくつかピックアップします。楽天VYMの規模感(かなり小規模)がわかりますね。

直近6カ月リターンはeMAXIS Slim米国株式(S&P500)以上

年初来から株価が下落を続ける中、楽天VYMはなかなかのパフォーマンスを出していることがわかります。下落相場でかなり踏ん張ってくれていますね。

【楽天VYMのリターン】…1行目と3行目に注目!

出典=楽天証券ホームページより

【eMAXIS Slim米国株式(S&P500)のリターン】

出典=楽天証券ホームページより

高配当なのに分配金は出ない(全額再投資)

楽天VYMの面白い特徴だと思うのですが、「高配当」をうたうインデックス・ファンドにもかかわらず、2018年1月の設定来、分配金を一度も出していません。

実際は分配金は出ているのですがファンド内で再投資されています。私たちに支払われると20%の税金がかかってしまうので、複利の効果を最大限得られます。

分配金はどれほどでているのでしょうか。年に一度のファンドの決算後に出される「運用報告書」を見ればわかります。

これまで4回の運用報告書が出されているので、覗いてみましょう。

出典=いずれも楽天VYMの運用報告書
ゆう係長

1万口あたりの「翌期繰越分配対象額」が順調に積み上がっていることがわかります。これが複利の源に!

手数料は0.192%で比較的少ない

信託報酬を含む管理費用は年率0.192%。2020年7月からの1年間は、1万口あたりの費用は21円でした。インデックス・ファンドの中では合格点だと思います。

ただし、他の投資信託と同様に「隠れコスト」があるので要注意です。隠れコストは、先程あげた運用報告書にしっかり書かれています。

2020年7月からの1年間の隠れコストを含めた総経費率は年率0.23%でした。

楽天VYMはどこに投資しているのか

本家VYMの基本情報

楽天VYMの実質的な投資先は、世界最大級の運用会社・バンガード社の米国高配当ETF「VYM」(Vanguard High Dividend Yield Index Fund)です。本家VYMです。

経費率は0.06%で圧倒的に安く、純資産は45,003百万ドルに上ります。

投資信託の楽天VYMと違って、ETFの本家VYMは日本人には人気が高いようです。楽天証券の「米国ETF売買代金ランキング-上位20銘柄」によると、レバレッジ型ETFを除くと5位にランクインしています。

VYMは米国企業約400社に分散投資している

VYMは米国企業、約400社に広く分散された高配当ETFです。組み入れ上位10銘柄は、ジョンソン・エンド・ジョンソン(ヘルスケア)、JPモルガン・チェース(金融)など、アメリカの世界的大企業で占められています。

【VYMの組み入れ上位10銘柄】

1Johnson & Johnson3.15%
2JPMorgan Chase & Co.3.02%
3Procter & Gamble Company2.72%
4Home Depot, Inc.2.44%
5Exxon Mobil Corporation2.41%
6Bank of America Corp2.31%
7Chevron Corporation2.02%
8Pfizer Inc.1.90%
9AbbVie, Inc.1.90%
10Coca-Cola Company1.75%

特筆すべき点は、GAFAM銘柄が含まれていないことです。

今回の株価急落では、ハイテク・グロース株が中心に売られています。下落相場でもVYMが比較的堅調なのは「GAFAM銘柄に投資していない」からと言えます。

セクター比率

セクター比率を見ると、バランスがよく、分散が効いていることがわかります。景気動向に業績が左右されにくいディフェンシブ・セクターの比率も高めです。

ディフェンシブセクターは、生活費必需品やヘルスケア、社会インフラなどのセクターを指します。

【セクター比率】

1金融21.6%
2生活必需品13.5%
3ヘルスケア12.7%
4資本財9.8%
5エネルギー8.8%
6公益7.9%
7テクノロジー7.6%
8一般消費財7.6%
9通信サービス6.3%
10素材4.2%
11不動産0.0%
出典=楽天VTYの月次レポート(2022年3月作成)

パフォーマンス

VYMの平均収益(税引前)は以下のとおりです。1年で14.45%、3年で12.96%、5年で11.1%、10年で12.21%、2006年11月10日の設定来の平均は8.71%となっています。

出典=バンガード社(https://investor.vanguard.com/etf/profile/VYM)

VYMは「S&P500にパフォーマンスが劣る」という理由から、これまでネットではデメリットを強調する意見が目立ちました。上昇相場を牽引してきたGAFAM銘柄が含まれていない点が弱点だったのです。

VYMと、S&P500に連動する米国株ETF「VOO」のパフォーマンスを比べると差は歴然です。

出典=yahoo! finance VYMとVOOのパフォーマンス長期比較

しかし下落に転じた年初来から見れば、VYMはS&P500をベンチマークとするETFを上回るパフォーマンスを上げています。

出典=yahoo! finance VYMとVOOのパフォーマンス年初来比較

長期的に見ればS&P500が優位であることは確かしょうが、2022年から始まった下落トレンドにはVYMの優位性が見て取れます。

楽天VYMが「2022年の下落相場」でも堅調なワケ

本家VYMとS&P500に連動するVOOの組み入れ銘柄を比べてみましょう。

銘柄が多いので上位30位だけピックアップします。

VYMVOO
1Johnson & Johnson3.15%Apple Inc.7.04%
2JPMorgan Chase & Co.3.02%Microsoft Corporation6.01%
3Procter & Gamble Company2.72%Amazon.com, Inc.3.71%
4Home Depot, Inc.2.44%Tesla Inc2.35%
5Exxon Mobil Corporation2.41%Alphabet Inc. Class A2.17%
6Bank of America Corp2.31%Alphabet Inc. Class C2.02%
7Chevron Corporation2.02%NVIDIA Corporation1.77%
8Pfizer Inc.1.90%Berkshire Hathaway Inc. Class B1.68%
9AbbVie, Inc.1.90%Meta Platforms Inc. Class A1.34%
10Coca-Cola Company1.75%UnitedHealth Group Incorporated1.25%
11Cisco Systems, Inc.1.71%Johnson & Johnson1.21%
12Broadcom Inc.1.70%JPMorgan Chase & Co.1.05%
13PepsiCo, Inc.1.64%Procter & Gamble Company0.95%
14Verizon Communications Inc.1.61%Visa Inc. Class A0.95%
15Wells Fargo & Company1.55%Exxon Mobil Corporation0.91%
16Comcast Corporation Class A1.55%Chevron Corporation0.82%
17Eli Lilly and Company1.54%Home Depot, Inc.0.81%
18Merck & Co., Inc.1.41%Mastercard Incorporated Class A0.80%
19Qualcomm Incorporated1.41%Bank of America Corp0.76%
20Walmart Inc.1.41%Pfizer Inc.0.76%
21Intel Corporation1.40%AbbVie, Inc.0.75%
22McDonald’s Corporation1.33%Broadcom Inc.0.68%
23AT&T Inc.1.23%Costco Wholesale Corporation0.66%
24Philip Morris International Inc.1.14%Walt Disney Company0.65%
25Texas Instruments Incorporated1.14%Coca-Cola Company0.63%
26Raytheon Technologies Corporation1.12%Cisco Systems, Inc.0.61%
27NextEra Energy, Inc.1.11%Thermo Fisher Scientific Inc.0.61%
28Bristol-Myers Squibb Company1.11%PepsiCo, Inc.0.60%
29United Parcel Service, Inc. Class B1.11%Eli Lilly and Company0.59%
30Linde plc1.10%Adobe Incorporated0.56%

これまで長く注目されてきたS&P500に連動するETFや投資信託は、GAFAM銘柄のパフォーマンスが全体を牽引してきました。

指標は企業の時価総額に応じた加重平均であるため、巨大企業のパフォーマンスが大きな影響力を持ちます。逆に言えば、GAFAM銘柄がコケれば、全体が大きくコケるのです。

S&P銘柄の集中投資、GAFAM銘柄は含まれず

一方のVYMの組み入れ銘柄は大型高配当株です。配当金を出さないハイテク・グロース株は含まれていません。

景気動向に左右されにくいディフェンシブ銘柄が多く含まれています。影響がないわけではありませんが、GAFAM がコケても大きくコケる恐れは高くありません。

とはいえ、VYMとS&P500に連動するETFや投資信託と無関係ではありません。

VOOの共通銘柄VYMだけの銘柄
VYMの組み入れ銘柄数185226411
VYMの銘柄割合93.12%6.87%100%

GAFAM銘柄を含まないとはいえ、VYMの組み入れ銘柄(割合)は、S&P500に連動するETF・VOOと9割以上が同じです。VYM独自の銘柄(割合)は6.87%に過ぎません。

楽天VYM、そして実質的な投資先であるVYMが下落相場でも比較的堅調な理由は、上がりきったハイテク・グロース株を回避しつつ、S&P500の厳選された銘柄に集中投資している結果なのだろいうことがうかがえます。

コロナショック以前はパッとしない印象もありましたが、楽天VYMと本家の今後の活躍に期待したいです。