投資信託

【投資信託のギモン】レバナスは大丈夫?どんなファンドが繰上償還されているのか

こんにちは。資産運用をする中で感じたギモンを、ただ調べ、みなさんと勝手にシェアするブログを書いています。今回のテーマは「繰上償還」です。

投資信託協会によると、日本国内には1万4380本の投資信託(ファンド)が存在しています。うち公募投信は6003本です(2022年4月末時点)。想像よりもかなりの本数でした。

ブログ主ゆう係長

生まれるファンドがあれば、消えるファンドもある。

投資信託には満期償還といって、定められた運用期間が終わり、私たちが預けた信託財産を清算し、口数に応じた償還金が返還されるケースがあります。無期限のものは満期は存在しないことになりますね。

一方で「繰上償還」は、当初設定していた期日よりも前に償還が行われることです。

ファンドの目的を達成した場合の「前向きな繰上償還」なら良いのですが…、なかには「後ろ向きな繰上償還」もあるはずです。

今回はこの、後ろ向きな繰上償還となったファンドを調べてみます。どんなファンドがこの末路を辿ったのか…。特徴や共通点が見つかればと思い調べてみました。

長期投資を実践するサラリーマン投資家のみなさんが、良いファンドと末永く付き合える参考になればと考えています。それでは本題に入ります。

繰上償還される投資信託のルール

レバナスの記事に書かれた繰上償還のギモン

今回、私が繰上償還について興味を持ったきっかけは、あるウェブ記事でした。

タイトルは『“レバナス投資”で被害続出? 背後に投資系インフルエンサーの影も』で、一部の個人投資家から根強い支持を集めるレバナス(ナスダック100指数に連動するレバレッジ型投資信託)の繰上償還の可能性に言及した記事した。

同記事は、「レバレッジ型投信が繰上償還される場合の多くは、株価の下落局面で発生する。仮に人気のある投信であっても、レバレッジによって株価下落の影響が増幅されると、その投信の純資産総額が大幅に毀損(きそん)し、繰上償還に追い込まれる」と指摘しています。本当でしょうか?

私はレバナスには投資をしていませんが、注目して記事を読みました。そこで感じたのが、以下のようなギモンでした。

ゆう係長

パフォーマンスが悪化したら繰上償還されるの!? 運用会社の都合で勝手に清算するような投資家軽視の仕組みなの!?

繰上償還される主な理由

さすがに、この記事は明らかな誤解・ミスリードを含んでいることが理解できます。レバナス投資家の不安を煽っているようにも思えますね。

繰上償還には法律に基づく厳格なルール(手続き)があり、投資家の意向を無視して運用会社の自己都合で勝手に決定できない仕組みがあります。

まずはレバナスの元祖、大和アセットマネジメントの「iFreeレバレッジ NASDAQ100」の目論見書を確認してみます。

「受益権口数や純資産総額の小さい投資信託は、繰上償還する可能性がある」とよくいわれますが、目論見書に口数や純資産総額の規定が書いてある場合が多いからなんですね。

しかし、「iFreeレバレッジ NASDAQ100」の場合、少なくとも純資産総額は目論見書には記載されていません。あくまでも受益権口数なのです。もちろん基準価格の下落も関係ありません。

目論見書を見ると、「やむを得ない事情」というのが抽象的で気持ちが悪いですが、ポイントは太字の「事前に受益者の意向を確認し」です。委託会社は繰上償還をする場合は、書面などで投資家の意向を確認する手続きを経る必要があります。

このほか、「監督官庁より信託契約の解約の命令を受けたとき」「委託会社が監督官庁より登録の取消しを受けたとき」、「委託会社が解散したときまたは業務を廃止したとき」に信託終了、繰上償還となります。まさしく強制償還ですが、かなりのレアケースでしょう。

投資家の意向を確認する機会が設けられる

投資家(受益者)の意向確認、賛成の要件は法律で定められています。

「iFreeレバレッジ NASDAQ100」の場合は投資家の意向確認を要件にしているので、原則的に運用会社が勝手に「暴落しているので、もうやめます!」とは言えないわけです。

意向確認は「書面決議」となります。「受益者の議決権口数の2/3以上」の賛成をもって可決となります。

なお、2007年9月29日までに設定された投資信託(旧法ファンド)の場合、投資家(受益者)の意向を確認する手続きは「異議申し立ての受付」で、受益権総口数の2分の1を超えない場合に繰上償還が実施されます。この点は、次の事例で見てみます。

【概要】繰上償還の流れ

【第1段階】運用会社による繰上償還の検討、販売会社との合意

【第2段階】投資家にお知らせ

【第3段階】書面決議or異議申し立て受付、結果の集計

【第4段階】償還!

繰上償還された投資信託の例(償還予定を含む)

ここからは満期償還を除く、繰上償還された投資信託の事例を見ていきます。もちろんファンドの役目を達成する場合の前向きな繰上償還ではなく、後ろ向きな繰上償還の事例です。

楽天証券のホームページ内にある「お取引注意銘柄-投資信託-」を参考に、2022年1月から5月30日までの間に①繰上償還された投資信託、②償還予定を発表した投資信託を見ていきますきます。

ゆう係長

意外に多くてびっくり…。理由の大半が「受益権口数が投資信託約款の繰上償還に関する規定に定める 口を下回る状態が継続」したことでした。

例)アジアセレクト・インフラ関連株オープン
  • 【運用会社】岡三アセット
  • 【お知らせ発表】5月25日
  • 【繰上償還日(予定)】8月26日
  • 【償還理由】「受益権口数が投資信託約款の繰上償還に関する規定に定める 5 億口を下回る状態が継続しており、また残高の大幅な増加も見込みにくいと推測」
  • 【純資産総額】3億2100万円(最新の運用報告書による)
  • 【実質コスト】年率2.908%(総経費率は4.49%)(最新の運用報告書による)

その他ファンド
  • あおぞら・新グローバル分散ファンド
  • ブラックロック・グローバル・バランス・ファンド
  • LM・米国・ラージ・キャップ・グロース・ファンド(アメリカンパワー)
  • 三菱UFJ国際投信、エコ・パートナーズ(みどりの翼)
  • インベスコ インカムセレクトファンド
  • アセットマネジメントOne、新光アジア・オセアニアREITオープン(毎月決算型/成長型)
  • キャピタルアセット「アセアンワールド ファンド」
  • イーストスプリング・アジア・オセアニア公益インフラ債券ファンド(毎月決算型/年2回決算型)
  • 三菱UFJ ジャパン・アクティブ・ファンド
  • 日興アセット、インデックスファンドJPX日経中小型株
  • 三井住友トラスト・アセット、ブラジル公社債ファンド <レアルスター>
  • 三菱UFJ国際投信「株式オープン」
  • あいグローバル・アセット、米国・シェールMLP・高配当株ファンド
  • あおぞら・新グローバル分散ファンド(限定追加型)2019-04(ぜんぞう1904)/2019-07(ぜんぞう1907)/2019-10(ぜんぞう1910)/2020-01(ぜんぞう2001)
  • アセットマネジメントOne、資本収益力日本株ファンド(3ヵ月決算型)
  • T&Dアセット、アジア・ダブルプレミア・ファンド(龍虎)
  • 三井住友DSアセット、ひとくふう新興国株式ファンド
  • 明治安田アセット、スイス好配当株式ファンド(為替ヘッジあり・為替ヘッジなし)(アルプスの恵み(為替ヘッジあり・為替ヘッジなし))
  • アセットマネジメントOne、ハイパーバランスオープン
  • GS ビッグデータ・ストラテジー(欧州株)Aコース(為替ヘッジあり)/Bコース(為替ヘッジなし)

これらのファンドを眺めていると、アクティブファンドばかりです。そして、決して運用成績が悪化したとか、基準価格が下がったからというわけではありません。インデックス型の投資信託に比べると、上昇相場にもかかわらず騰落率で見劣りすることは確かですが…。

あくまでも受益口数が想定よりも下回り、経費がパフォーマンスを妨げたり、流入資産が少ないことで株式への分散投資のメリット等が損なわれる等のデメリットが多くなったことで、運用継続が難しくなったことが理由にあげられます。

低コストで、パフォーマンスのいいインデックス型の投資信託が隆盛を極める中、こういった高コスト投資信託へのニーズが低下していることも理由に挙げられるかもしれません。

この点は引き続き調査をして、ブログでご報告をしたいと考えています。